ジニ係数と貧困率ジニ係数所得分布などのように、統計の各個体(標本)の大きさに関する分布状況について、その平準度を見るための指標。値が小さいほど平準度は高い。 代数的には、「任意の2つの標本の格差が全標本の平均値に対してとる比率の期待値」として定義される。 ![]() 所得分布で説明すると、横軸に人数、縦軸に所得を取り、所得の低い人から順に並べた場合の所得累積額の描く曲線(ローレンツ曲線)と両端点を結ぶ直線(対角線=均等分布線)で囲まれる面積となる。ただし、軸と対角線で構成される三角形の面積を1とする。 ![]() しかし、ジニ係数がgで、社会全体が富裕層と貧困層に分かれ r:1−r の比だとした場合、富裕層の所有割合が、r+gとなることを目安に考えると、ある程度の感覚的把握が可能になる。 例えば、ジニ係数が 0.3で、富裕層が2割なら、富裕層は全体の5割を所有していることとなる。 右図参照
例えば、住宅・土地に関する資産格差は、借家を積極的に選択する人が一定割合いれば、ジニ係数が大きいだけで問題があることにはならない。 他方、ジニ係数について地域間の比較をする場合、ジニ係数の格差が単にそれぞれの地域の構成員の属性の格差を表している可能性があることに、留意する必要がある。 例えば、単身の学生等が多い学園都市と家族が住む新興住宅都市で世帯資産のジニ係数を比較すれば、学園都市のジニ係数が大きくなることが予想されよう。 なおジニ係数は平等度を捉える指標であるが、ジニ係数が小さいほど平等度が大きく(高く)なり、大小の方向が逆になっている。文章で表す際には、この点に留意して、分かり易い記述を工夫することが求められる。ちなみにジニ係数を「格差」を表す指標と捉えれば変化の方向は同じくなる。 貧困率![]() 上記の例で言えば、一人の王様が全体の3割を所有し他の全ての国民について格差がない社会でも、逆に3割の何も持たない奴隷層とその他7割の格差のない市民層の社会の場合でもジニ係数は、0.3である。 なお、この場合について、どちらがより平準度が高いかという明確な定義があるわけではない。 こうしたジニ係数の難点を避けるため、近年は所得格差を表わす指標として貧困率が用いられることが多くなっている。 貧困率を求めるには、まず、世帯規模が大きければ、一人当たり所得額は相対的に少なくても同等の生活が可能と考えられるため、世帯毎の所得を世帯人数の平方根で除して評価する。そしてこの所得額の低い世帯から順に並べ、その中央値を求め、中央値の1/2に満たない世帯を貧困世帯として貧困率を求める。 なお、日本の現状ではジニ係数が比較的低いにも拘らず、貧困率が高くなっているが、図の左側の形となっているためである。 この場合、所得の再分配で格差を少なくするためには、少数の富者というより多数の中間層(相対的高所得層)の負担が必要である。
我が国の世帯の貧困率は10%強と言われており、概ね妥当な数値となっていると考えられる。 ちなみに、「全国消費実態調査(2014年)」による貧困率は10.6%であった。 ただし、集計公表されている統計だけでは情報が不十分であり、かなり恣意的に設定した数値もある。 また、ここで使用したレベルの都道府県別のデータは公表されていない。 関連項目に戻る (Mar.14,2021Rev.) |