ソフトパワージョセフ・ナイ氏が亡くなった。国際政治学でのソフトパワーの提唱者である。アメリカ、中国、ロシア、さらには西ヨーロッパ等がそれぞれ帝国主義的な体制へと回帰している。我が国は、この動向に対して、専ら軍事力をどう高めるかを議論し、順次手を打っている。国民も総体としてこれを肯定しているようで、反論がし難くなってきている。 しかし、一方で、ソフトパワーの引き上げについて議論し、着実に手を打っていくことが極めて重要ではなかろうか。 グローバルサウスとの連携等を念頭に置くと、中国やロシアのように多様な資金援助という方法もあるが、これについては、かなり下心が見え危ういものとなっている。 このため、まず国として誇りある生き方を実践し、国際社会に示すことが求められよう。これに対して、我が国としては、地球温暖化への積極的な対応、核不拡散への主導などいろいろとやるべきことが多い。 さらに、中国やロシアからは、ことあるごとに我が国の歴史的行動が持ち出されるが、これには、筋を通した姿勢を明確にするとともに必要な行動を起こすことが重要であろう。歴史は打ち消すことはできずそれを正しく認め続ける必要がある。かつて日本は、国際社会での常識でもあった帝国主義(植民地主義)、人種差別等を自らも実践していた。しかし、戦争の終結を契機に、これを否定し新たな生き方を始めているのだと確認し、関連した行動を起こすことが求められている。 例えば、現在のイスラエルの行動はまさしくジェノサイドであり否定されるべきである。そして、イスラエルの形成は、過去の発想を引き継いだものであり、欧米の多くの国もそれぞれのいきさつと国内のユダヤ人の勢力等から否定し難くなっている。こうした中で、パレスチナを国家として認め、戦争の仲裁を取り持つことなどもあり得るのではなかろうか(これは、斉藤幸平の見解を踏まえたものである)。 May.14,2025 目次に戻る |