正義論講義

 「中村聡一著『正義論講義』東洋経済新報社2023年」を読んだ。
 プラトンとアリストテレスを登場させて正義に関連する話題について語っている。
 私にとっては極めて読み難くかったが、自分の考え方を持ちながら拾い読みするとヒントがいろいろとあった。

ここでは、正義に関連した諸事項の私なりの考え方を整理する。

・正義 (本書では正義を直接定義していない。)
 「自らが寄り添って生きるべき規範」として理解したい。
  これは、生まれ持ったものを基礎にして、その後育った環境の中で形成される。
  一貫性を持つことが必要であろう。
  理性により、この規範を自律的に確認し続けることが必要である。
   ちなみに、私自身の正義は、「皆で仲良く生きていくこと(コンビィビィアルな生き方)」である。

・フェアネス
 他者にも自らと同じように接すること。
  この対称性の原則が正義論に欠かせない原理となろう。

以下の内容は、この2項(正義とフェアネス)から演繹されるのではなかろうか。

・徳
 多くの人が持つ一般的規範をいう。
  厳密に特定できる訳ではない。
  また、社会が大きく変わる際には徳では対処できないこととなる。
  このため私自身の正義論は、カントを基礎としたロールズの正義論に沿って展開している。

・愛
 特定の人・集団との親和性を持つこと。
  安寧な生活にとって重要なことは間違いない。
  ただし、規範のフェアネスに偏りをもたらす。
  国家への愛を強要され、これに背くと国賊とされる。

・法
 契約により規範を制度化したもの。
  違反すれば罰則が伴う。

・自由
 自らの規範に沿った行動が他者により阻害されないこと。
  しばしば環境により阻害される事態が生じざるを得ない。
   一般に、自由が阻害されない社会の形成が望まれる。

・幸福
 安寧な生活のこと。
  皆の幸福が達成される仕掛けが福祉でありこれが政治の目的となる。

・正義の不在
  自らの生きる指針が不在という意味になる。
  社会としては秩序の欠如に繋がる。

Mar.08,2025

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