如何にして戦争を避けるか

 「グウィン・ダイヤー著『戦争と人類』ハヤカワ新書2024年」を読んだ。
 とりあえず考えたことを引用を含めて整理しておく。

 過去約80年間、人類は世界大戦といった大きな戦争を起こさないでいる。これは、人類が倫理的に向上したということか。
 過去の戦争の歴史から見ると、実際は、戦争を起こすと報復があり不利益だからということでなかろうか。もし、報復がなくあるいは僅かであり、見返りとして得るものが大きければ、戦争を起こす可能性がいくらでもありそうだ。
 80年間それなりの平和を経験してきた中で戦争をしない倫理観を述べても、環境が変わるとどう行動するかはよくわからない。もちろん平和時の倫理観を磨き上げることが重要だが、これで人類が共存できる状況には至っていないと思える。

 今後、地球温暖化の中での難民問題、飢饉等の問題が起き、その中で多様な争いが起きる可能性がある。こうした中で、戦争を確実に避けることができるかは、極めて危うい。
 我が国にとってのちょっとした不利益に直面し、戦うべきという声が起き、それに反対する者は非国民という風潮が広まり、主戦論が席巻してしまうことも大いにあり得よう。

 それでは、どのようにして戦争を避ければいいのか。

 個人的には、他者の正当防衛は認めても、自らは人を殺傷したくない。このような原則で議論をしたいが、国際関係には、通用しない。現実的には、「ガンディーのような人が世界に現れ、人々の考え方を変え。国益や権力への執着からわたしたちを解放とてくれることを願っても仕方がない。」であろう。

 世界政府の成立を願うとしても、長期的目標ではあり得るが、当面成立することは望めない。
 本書にあるように、国連では「戦争回避の基本的合意を決裂させないよう力のある加盟国、あるいは加盟国のグループの利益を著しく害してはいけないという共通認識」をもって対応していくしかない。

 一方で、国民が破滅へ走らないよう意識を高めていくことも重要である。
意見が一方に傾き、同意を求める風潮が強くでてくる。このような気風は改めておく必要があろう。

 他方、平和形成への積極的貢献に努めていくことも重要である。

 そして軍備はどうするか。バランス・オブ・パワーの発想にあるように、他国の侵略を誘わないレベルの軍備は避けられないのか。

 いずれにしろ、普段から皆で考え、発想を鍛えておくことが必要であろう。
 それとともに、我が国が、自立できる体制を整えておくことも不可欠だが、極めて心もとない。

May.17,2024

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