ベーシックサービス

 「井手英策著『ベーシックサービス=貯蓄ゼロでも不安ゼロの社会』小学館新書2024年」を読んだ。

 財政学者が新しい社会を創ることの必要性を必死になって説いている。財政的可能性を示しながら新しい社会を描いており、それなりに共感できる。
 しかし、社会を皆で創ることについて、全体主義に陥らず、各人のボランタリィな活動で遂行されるというイメージを描くことが極めて難しい。
 このため、全体として、取り留めなくなっているように思える。

 MMT(Modern Monetrary Theory 現代貨幣理論「自分の国の通貨でいくら借金をしても問題はなく、財政は破綻しない」)は、理論はともかくとして、円安からの厳しいインフレを招く可能性が多分にある。結果として日本経済の破綻に繋がる恐れがあり著者の主張に賛同する。
 財政の範囲内で政策を展開するのが「財政民主主義」鉄則であるが、票が集まらないといってこの箍をはずしてもいいものだろうか。ちなみに、現在の日本政府では憲法の下で政策を展開する「立憲民主主義」の箍まではずしているように見える

 ただ、このような節度ある発想で政策を主張する政党がなぜ出ないのか。著者の思いは、私も日頃思っているところである。自由民主主義の限界に鑑みリベラルな政策を展開する際の基本的要件と思える。

Apr.18,2024

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