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第4章 堅実な生活
第3節 健やかな暮らし
第1項 健康状態 ―健康意識は低いが体調は良好―
「国民生活基礎調査(厚生労働省2019年)」によれば、富山県民は他県民に比して、検診は比較的受けるが、健康習慣の行動については若干消極的なようだ。ただし、健康状態は比較的良好で、入院通院は相対的に少ないようだ。
「国民生活基礎調査」は毎年実施されているが、3年毎に大規模調査が行われ、2019年調査がこれにあたる。調査標本数は人口ベースで全国で約70万人であり、富山県に限れば7千弱であろう。
ただし、健康等の実態は性年齢別に大きく異なり、調査結果を評価するには、細分して検討する必要がある。例えば性別、年齢5歳階級別で捉えると約30区分となり、ここまで細分すると個々の区分の標本数は250以下であろう。
このため該当者がかなり少ない項目や、地域間での差異が少ない項目などでは、結果の評価はかなり危うくなっていることに留意が必要である。
本頁の各種率は年齢階層によって大きく異なるため、都道府県全体としての率を比較するためには、年齢構成を修正する必要がある。このため、「年齢調整値」として各年齢層別の値を全国の年齢構成でウエイト平均した値を用いている。
(1) 健康検診の受診
富山県の健康診査の受診率は、各年齢層とも他地域に比して高くなっている。
これは、勤務先での集団検診を受けている者の比率が高いためであろう。
ちなみに、加入する健康保険について国民健康保険の比率が低くなっている。
検診受診率は、高齢者で低くなっているが、これは職場での受診が減少するためであろう。
女子の受診率は男子より一段低いが、これは職場での受診が少ないためであろう。
(2) 健康行動の実践
| 全国 | 富山 | 差異 | 都道 府県 順位 |
規則正しく朝・昼・夕の食事をとっている | 52.8 | 54.4 | 1.6 | 8 |
バランスの取れた食事をしている | 36.4 | 33.7 | -2.6 | 33 |
うす味のものを食べている | 27.4 | 26.7 | -0.7 | 28 |
食べ過ぎないようにしている | 39.2 | 35.7 | -3.5 | 46 |
適度に運動をするか身体を動かしている | 35.2 | 31.2 | -4.0 | 37 |
睡眠を十分にとっている | 33.2 | 31.7 | -1.5 | 43 |
たばこを吸わない | 43.1 | 38.9 | -4.1 | 43 |
お酒を飲み過ぎないようにしている | 27.0 | 23.8 | -3.1 | 43 |
ストレスをためないようにしている | 28.1 | 26.0 | -2.1 | 44 |
その他 | 2.5 | 2.0 | -0.5 | 45 |
特に何もしていない | 13.3 | 14.6 | 1.4 | 9 |
不詳 | 28.1 | 26.0 | -2.1 | 44 |
健康のためのいろいろな行動についてみると、富山県では相対的に低調なようである。
全国値との差が大きいものとしては、「適度な運動」や「禁煙」がある。
また都道府県順位が特に低いものとしては、「ストレス回避」や「過食がある」。
なお、規則正ししい食事は、相対的には多くなっている。
運動実施率は大都市圏で高く、東北地方で低い。
年齢別では、70歳代にピークがある。高齢となって意識して運動するということであろう。
禁煙も運動と同様に大都市圏で高く、東北地方で相対的に低い。
大都市圏での女子の禁煙については必ずしも高くない。
男子は高齢期で高い。
女子は、出産期の20歳代で高い。
禁煙率が概ね50%以下であることについては、通念と異なる気がする。
年齢階層別の健康行動の実施者比率の推移は、いずれの項目も若年層で低く、高齢層で高くなっている。ただし、概ね70歳台がピークで、その後は低下している。
(3) 健康状況
富山県では、体の異常を訴える者の比率は比較的低い。
日常生活で不都合がある者の富山県の比率は、都道府県の半ばである。
年齢階層別にみれば、60歳代で相対的に高くなっている。
(統計データ)
(4) 診療
病院等に通院する者の比率は、富山県ではかなり低い。
富山県で入院する者の比率もかなり低い。
(統計データ)
(5) 診療(患者調査) ―入院指向―
富山県では他地域に比して、医療機関への外来での受診率は低いが、入院での受診率は比較的高くい。
ただし、医療費抑制策の中で近年の入院受診率は低下している(次項で説明)。
・医療機関への受診率などは、年齢や男女によって差がある。このため「患者調査」統計について都道府県比較する場合は、地域の年齢構成・男女比等の影響に注意が必要である。しかし、細分化した比較は煩雑になると同時に統計的にも危うくなるため、この統計の利用に際しては、こうした限界に留意しつつ実態を理解するようにしなければならない。
・受診の統計については、患者の居住地及び医療機関の所在地の2つの視点があることに留意が必要である。ただし、受診率については患者の居住地の統計となる。
都道府県毎の医療機関への入院での受診率と外来での受診率に相関が見られない。
富山県を含む北陸3県については、入院での受診率は全国平均より高く、外来での受診率は全国平均より低い。
入院での受診率については、富山県は高めに位置している。 の
入院での受診率が特に高いのは、九州四国の各県と北海道などである。これはこれらの地域で高齢化がより進んでいるためとも考えられるが、東北各県では必ずしも高くない。
一方、受診率が低いのは、首都圏、北陸を除く中分圏の都県である。
入院での受診率は、加齢とともに高くなり、75歳以上では全国平均で約4%となっている。
富山県では全年齢層で全国平均を上回っている。
外来での受診率については、富山県はやや低めに位置している。 の
外来での受診率が特に高い県は、九州とともに近畿・東北などにもあり、北海道はかなり低くなっていなど、入院とは異なる様相となっている。
外来での受診率は、15-24歳層を底としており、概ね45−54歳層から次第に上昇している。
富山県では概ね全年齢層で全国平均を下回っている。
富山県の入院受診率を全国平均より高くしている傷病は、
X 精神及び行動の障害
Y 神経系の疾患
\ 循環器系の疾患
などである。
富山県の外来受診率を全国平均より低くしている傷病は、
] 呼吸器系の疾患
]T 消化器系の疾患
]V 筋骨格系及び結合組織の疾患
]W 腎尿路生殖器系の疾患
]\ 損傷,中毒及びその他の外因の影響
]]T 健康状態に影響を及ぼす要因及び保健サービスの利用
などである。
T 感染症及び寄生虫症
U 新生物<腫瘍>
V 血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害
W 内分泌,栄養及び代謝疾患
X 精神及び行動の障害
Y 神経系の疾患
Z 眼及び付属器の疾患
[ 耳及び乳様突起の疾患
\ 循環器系の疾患
] 呼吸器系の疾患
]T 消化器系の疾患
]U 皮膚及び皮下組織の疾患
]V 筋骨格系及び結合組織の疾患
]W 腎尿路生殖器系の疾患
]X 妊娠,分娩及び産じょく
]Y 周産期に発生した病態
]Z 先天奇形,変形及び染色体異常
][ 症状,徴候及び異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの
]\ 損傷,中毒及びその他の外因の影響
]]T 健康状態に影響を及ぼす要因及び保健サービスの利用
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(6) 在院日数(患者調査)
富山県の在院日数は、35日であり、全国平均の29日より20%程度長く、都道府県の中では、14番目の位置にある。
在院日数を傷病別にみると、X精神及び行動の障害が特に長く、ついでY神経系の疾患、\循環器系の疾患と続く。これらの傷病については、富山県は全国平均を大きく上回っている。
(統計データ)
(Mar.05,2019Add.)
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(Feb.03,2022Rev.)
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