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第4章 堅実な生活
第2節 安心した暮らし
第2項 高齢者の暮らし

2.高齢者の施設
―急変する施設構成―

(1) 施設の推移
(2) 特養入所待機者


(1) 施設の推移
 2000年から介護保険制度が始まり、介護保険施設(入所)として、従来の老人ホームに、医療系の施設が加わった(従来の老人ホームうち軽費・養護は介護保険制度に含まれない)
 右図ように整理をして見れば、介護保険制度は、従来の社会福祉施設制度さらには健康保険制度の限界を引き受けるために、新たに必要資金を導入する制度として開始されたものであることは明らかであろう。


 当初定員数が急増加したが、第3期(2006〜2008年)の半ばからは一時的減少を含めて横ばいとなり、さらに第6期(2015〜2017年)には減少に転じている。これは、当初、制度の充実を図ろうとしたものの、保険料負担の限界から抑制せざるを得なくなっているものである。ただし、実際の需要、施設経営の事情等から単純に抑制することは、容易でないことを物語っているのであろう。
 本質的には、従来の医療相当部分さらには施設福祉の部分を削減していかなければ、持続可能な社会保障制度として成立せず、改革の試行錯誤が続けられているということであろう。



 施設種類毎にその推移を詳しく見ると、従来からあった社会福祉施設としての老人ホーム(軽費老人ホーム、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム)は、1980年代から次第に増加して来ていたが、介護福祉施設となる特別養護老人ホームが、介護保険制度が開始された2000年前後から急増し、その後、2007年をピークに逆に急減、再増加するという経緯をたどっている。
 なお、軽費老人ホームも2000年代の初めに増加を見せている。

 介護保健施設については、概ね2004年まで増加し、その後横ばいが続き、2010年には一旦減少し再び増加するといった動きを見せている。
 介護療養施設(在所:入院者数)については、2002年をピークに漸減している。ちなみにこの型の施設は制度的に廃止することが目論まれている。


 都道府県毎の社会福祉施設としての入所老人ホームと介護施設としての入所施設の合計定員数の推移を65歳以上人口当たりで見ると、かつて富山県は、全国の中でも最も少なかった。しかし、1980年代半ばから次第に増加し、さらに2000年から介護保健施設・介護療養施設が加わるとともに介護福祉施設(従来の特別養護老人ホーム)も急増し、富山県は都道府県の中でも特に多くなっている。
 富山県の位置の逆転については、社会福祉の措置にはお世話にならないが、介護の保険はそれなりの権利として大いに利用していこうということであろうか。
 なお、団塊の世代が65歳となり始めるのは、概ね2012年で、それ以降は分母が大きくなっていることに留意が必要である。


(統計データ)


(2) 特養入所待機者
 2019年の富山県内の特別養護老人ホーム入所待機者数は2983人で、75歳以上人口比16.9%であった。これは、全国の15.8%より若干高く、都道府県の中では26番目であった。
 75歳以上人口比の地域分布は、東北、中国で高く、首都圏等で低くなっている。
 この統計は各特養での入所申込者を調査したもので、大都市圏では県境を超えた申込があることに留意が必要である。山梨県が高いのは東京都からの申し込みがあるのだろう。


 富山県内の特別養護老人ホームの定員は5112人(2017年現在)で、これに対して待機数は58.4%となっている。全国の比率も58.2%で富山とほぼ同じであり、都道府県の中では、29番目であった。
 都道府県毎の比率の分布は、75以上人口比と概ね重なっている。


 人口当たり待機率の変化を見ると、多くの地域では、2013年にかなり高かったものが、2016年にかなり低下し、2019年には若干の低下となっている。これは、2016年からは、施設毎の待機者数の単純合計を改め重複計上を除くようにしており、連続性がないということである。
 富山を含め幾つかの県では、2013年から2016年に増加しているが、これは2013年に既に重複を削除していたものとみられる。
 待機者数の決定要因としては、特養自体の定員はもとより、療護施設等での受入れの変化が大きく影響している。さらに高齢者の増加とともに、介護度の判定の変化、特養入所意向の変化など多くの要因が重なっている。このため、待機者数の意味の判断は、統計分析とともに現場での状況把握が必要であり容易ではない。


 他方、待機者の内の、自宅待機の者の比率は、富山県で35.7%であった。全国では39.7%で、富山県は都道府県の中で27番目となっている。
 都道府県毎の多寡については、大都市圏で高くなっていることが目立つ。


(統計データ)

(Apr.29,2020)


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(Apr.29,2020Rev.)