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第4章 堅実な生活
第5節 価値ある暮らし
第1項 文化

2.文化財
―相対的に少ない文化財―

 歴史的経緯から富山県には、国宝・重要文化財は相対的に少ない。

 富山県の国指定文化財件数を見ると、重要文化財は極めて少なく51件で、全国の0.4%にとどまっている。
 富山県は、関西、関東に挟まれた中部圏にありながらも、重要文化財の件数は、相対的に少なく、「天ざかる鄙」となっている。
 これは、現在、人の居住する平野部は、ほとんど大河川の氾濫原であって、明治以降の治水事業の進展まで、財の蓄積が困難であったためではなかろうか。また、例えば、大伴家持の在任は、奈良の大仏建立を支えるものであったし、江戸時代の体制は、加賀百万石を支えるものであったなど、下積みの文化の地域であったことも影響していよう。


 他方、史跡・名勝・天然記念物については、合計で37件であるが、全国の1.2%であり、富山県の規模に見合った件数と一応いえよう。
 ただし、他地域と比して、少ないことは否めない。


 国指定の重要文化財及び史跡・名勝・天然記念物で見る限り、富山県は必ずしも観光資源に富んだ地域とはいえないであろう。
 なお、県内の文化財の分布を見ると、全国の中での富山県の位置と同様の状況にある。まず多くの文化財は、高岡市・富山市に集中している。また、黒部川や早月側等の氾濫原であった県東部では指定されているものが少ない。


 「富山県の観光資源は多いのだが、知名度が低い」という言説があるが、これは県民を鼓舞するためのものであろう。
 もちろん「豊かな自然がある」などの主張もあるが、明確な尺度を持ったものではない。
 ただし、観光資源の意義は、単にそこに存在するものではなく、我々がそれに触れ、楽しみ、発信する文化的活動に他者が共感するものでなかろうか。そこに何があるかより、そこで何をしているかこそが大事なのではなかろうか。
 この意味では、例えば、高岡で「万葉」にこだわったいろいろな活動がなされていることには、それなりの大切な意義があろう。
 なお、観光に関する議論は、文化論とともに、他方で産業論としても展開されるが、この際には地域の産業のあり方の全体像の中で論じられる必要があろう。

(統計データ)

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(Mar.27,2015Rev./Mar.07,1998.Orig)