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第3章 モノづくり指向の産業
第4節 就業環境
第3項 雇用条件

3.賃金水準
―大きい格差―

(1) 富山県・性年齢別
(2) 都道府県・性年齢別
(3) 経年変化
(4) 企業規模
(5) 業種
(6) 短時間労働
(7) 毎月勤労統計・現金給与総額

 賃金は、年齢によって大きな差がある。同時に男女、企業規模、業種によっても格差は大きい。これらの背景には勤続年数を含め相互に強い相関が予想される。ただし、この相関の明確な確認には、統計の個票分析を含め丁寧な整理が必要であろう。


(1) 富山県・性年齢別
 年齢別には50歳代にピークがある。
 性差はかなり大きく、女の加齢に伴う上昇は男に比べかなり緩やかである。
 勤続年数に差があるが、それ以上に大きな差となっていると見られる。



(2) 都道府県・性年齢別
 賃金には地域差がかなりある。
 地域差は、年齢、性差というより業種、規模の違が背景にある。



 都道府県毎の男女賃金については、相関が高く、女は男の概ね7割となっている。



 全国値は、東京等大都市圏の賃金によってかなり高い位置に引き上げられている。

 都道府県の中では、富山県の賃金は男の場合中間よりやや低い位置にある。



 女については、富山県は、かつてはやや高めの位置にあったが、次第に中程になってきている。これは、女の就業率の差の縮小によるものであろう。



(3) 経年変化
 最近年の賃金の変化については、男では2000年以降、特にリーマンショックで低くなり、その後2000年代当初の水準には戻っていない。
 女では近年、各年齢層で大幅に上がっている。
 ただし、この統計は「一般労働者」であり、「短時間」、「臨時」を含んでいない。このため、雇用の非正規化等が進んでいると、賃金の回復は実質的な意味を持たなくなる。



(4) 企業規模
 企業規模別には、男の1000人以上が50歳代でかなり高くなっている。
 女の規模別格差は相対的に少ない。



(5) 業種
 業種別には、男の場合、金融保険業で特に高くなっている。


 女の場合、総じて差は目立たないが、小売りの30歳代以降で低くなってること、金融保険業の50歳代で高くなっていることがみられる。



(統計データ)


(6) 短時間労働
 賃金構造基本統計調査によって、短時間労働者(パートタイマー)の賃金の状況を産業大分類別に見る。
 ただし、実際には、多様な働き方、多様な賃金水準があり、統計はその平均値に過ぎない。また、業種によっては労働省者数がかなり少ないものもある。
 短時間労働者の多い業種として、卸小売、医療福祉、宿泊飲食、製造、その他サービスなどがある。その他の業種の統計値については、積極的な意味を持つのか留意が必要である。


 右図は、月当たり実労働日数と日当たり労働時間を表したもので、その積は、月当たり労働時間となる。
 月当たり実労働日数は、多くの業種で15〜20日であるが、宿泊飲食は15日を下回っている。
 日当たり労働時間は、5時間台が多いが、卸小売では女が6時間を超え、逆に男では4時間台となっている。宿泊飲食は女が5時間を割り、男も5時間強に留まっている。
 この結果、月当たり労働時間については、女の卸小売が120時間近くで、事業展開の中核に組み込まれていることが分かる。また、製造で約110時間、医療福祉で約100時間と大きい。これに対して、宿泊飲食は男女とも約60時間である。


 右図は、月当たり労働時間と時間当たり所定給与を表したもので、その積は、月当たり所定給与となる。
 時間当たり所定給与は、多くの業種で1000円台である。女のその他サービスは、900円台でかなり低い。また、宿泊飲食も約1000円で低い。
 医療福祉は女で1100円台ねさらに男で1300円台と高い。また、卸小売では女で約1100円、男で1300円台と高い。これらの業種ではその事業展開に短時間労働者がしっかりと組み込まれておりさらに、男女の役割が異なっているようだ。
 この結果、月当たり所定給与については、10万円前後の業種が多い。宿泊飲食では6万円台でかなり低い。
 なお、労働者数は少ないが、学術専門、金融保険、情報通信がかなり高いが、これらにはそれなりの専門職が含まれているのであろう。


 右図は、月当たり所定給与に所定外給与の1/12を加えたもので、月当たり給与となる。ただし、所定外給与が目立つ業種は限られている。

 男では、学術専門での所定外給与がある程度ある。


 女では、労働者は少ないが、情報通信、電気等で所定外給与がある程度ある。


(統計データ)

(Apr.18,2020)



(7) 毎月勤労統計・現金給与総額
 毎勤統計地方調査によれば、2018年の富山県の現金給与総額は、303千円/月で都道府県の中では16番目の位置であった。
 給与は、性別・業種・企業規模等の属性によつて明確な差があるが、毎勤統計地方調査ではこれらを区分することはできず、この現金給与総額の意味は判然としたものでない。


 近年の現金給与総額の推移については、'11年まではリーマンショックの影響があり、以降ある程度の回復を見せ、その後横這いとなっている。
 なお、各地域の水準に対して全国値が高い位置にあるが。これは全国(全国調査の値)は一部の都府県によって引き上げられているためである。


 (統計データ)


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(Apr.17,2020Rev.)