無策が続く崩壊する社会これまでのメモと重複するが再度整理しておく。この後に、経済運営、国際平和貢献、地域社会再生について検討してみたい。 近年、科学の進展は著しく、間違っていることもあろうが、宇宙の生成、成り立ちについてかなり分かってきた。この結果、我々は偶然の所産であり、各個人は、ゲノムのバトンタッチと環境への若干の変更をもたらす存在であることが見えてきた。各人がこれをどう感じるかはともかく、各人がどのように生きるかは、各人のそれまでの生活の中で身に付けたどう生きたいかという意志に沿うしかない。これを宣言することが、全ての出発点となる。 しかし、人類が共にどう生きるかといった知恵は持ち得ていない。そして、人類社会が早晩崩壊していくことは間違いなくなってきている。日本でいえば多様な気象災害が増加し、場合によっては海水面の上昇で居住地の減少から移動が強いられるかもしれない。また、世界的な食糧危機の中で食糧不足から飢餓に直面する可能性もある。日本で、若い人がグレタ・トゥンベリさんのように反乱を起こそうとしないのは不思議である。 こうした事態が予想される状況にどう対応していくか。それは、多少とも事態の進捗を遅くすること、そして崩壊していく社会の中でそれなりにどう仲良く生きていくか工夫することであろう。 しかし、これまでの世界、中でも我が国は、これらの限界を直視せず無策を続けてきた。 次に、私が、国、県、大学に勤める中で、実際に感じてきたことを整理してみよう。 私が大学を卒業し、経済企画庁に入庁したのは、1970年である。 この直後1972年にはローククラブの「成長の限界」が報告された。しかし、私を含め大多数の人は、マルサスの再来として、実際に限界に突き当たることを想像できなかった。 次いで、1970年代半ばには、合計特殊出生率の低下が起こった。しかし、国は回復するとして、人口減少の可能性を直視しなかった。諸外国の状況を見ると、出生率の低下はかなり確実な動向であり、専門家は、人口減少を予想していた。これには、社会保障等の長期的転換を進めることを忌避していたきらいがある。ちなみに、私は、この頃一時的に厚生省に出向していた。 1980年代の初めには、我が国の社会基盤施設整備は概成していた。これに加え人口減少が見込まれることもあり、基盤整備の中央集権的予算配分は転換すべき時期にきていた。しかしこれは、未だに変化していない。 ちなみに、私は、総合的政策の計画策定をしたいということで1970年代末に県庁へ転籍した。そして 県庁の総合計画策定では、人口減少を直視し、基盤整備の方向転換が必要なことを確認したが、実際にはできていない。 さらに1980年代末には、地球温暖化が明確になってきた。我が国は、これに対応するための世界会議(リオデジャネイロ1992年)に首相を国会の都合として出席させず、長い間まったく対応しようとしてこなかった。現在も本気で率先して取り組もうとはしていない。 1990年代半ばからは、バブル経済崩壊後の混乱期である。 経済界は、舞浜会議に見られるよう雇用責任を放棄した。この結果、非正規雇用が拡大していくこととなった。 また、一層の景気後退を避けるため、金融機関をはじめとする死に体の企業の温存が図られた。さらに、景気刺激策として財政規律の崩壊が進んだ。自国通貨の借金で破綻は起こらないという現代貨幣理論は、無責任な理論に思えるがいかがだろうか。 2000年代に入ってからは、景気浮揚の中で結果として多くの人も潤うようになるとしたトリクルダウン仮説が主張され、新自由主義経済の下での自己責任が強調された。 この中で、国民の経済格差は拡大し、それぞれが疲弊し、各人、企業の能力が低下するにいたった。こうした中で、官僚の政策形成能力も脆弱化してきたように思える。 さらに、2010年代には、正しく生きるという姿勢を企業も国民も喪失し、2010年代末からは様々な不祥事が噴出することになった。2020年代に入ってからは、政治においても正しさの感覚を喪失していることが露呈している。 他方、2020年代に入って、幾つかの戦争が起きている。こうした国際環境の中で、我が国はなし崩し的に軍備を拡大している。 いずれにしろ、これまで、我が国、世界に山積する大きな課題を正面から捉えず、必要な体制の転換を図らず、微温的政策を継続してきている。 特に、問題なのは、地球温暖化、そして格差の解消、財政規律の取り戻しなどに取り組むため、経済の転換をどう図っていくかということであろう。また、国際的平和を維持するためにどんな姿勢をとっていくかも明確にしなければならない。先取りして言うと、新たな社会の在り方としては、互いに支えあう地域社会をしっかりと形成していくことではなかろうか。 ※最近30年間の経済政策等の内容については、かなり不確かな面があり、書き直す予定。 Apr.05,2024 表紙に戻る |