気候変動による社会の崩壊

 中川毅著『人類と気候の10万年史』(BlueBacks2017年)は、福井県にある水月湖の年縞の探索を詳しく述べながら、その他の地域からの情報も加え地球の過去の気候変動を探っている。
 これまでの気候変動は、地球の自転軸の歳差運動と地球の公転軌道の離心率の振動の影響を基礎としながら、多様な不規則変動が加わっている。この中には、安定期と不安定期が見られ、不安定期にはかなり大きな変動が見られる。これによって、植生の大きな変動や海面の今日比30m上昇などもあった。
 ただし近年1万年は基調的サイクルから見れば寒冷期に入っているにも関わらず高温安定期となっている。ちなみに、これは人類の農耕によるものとの説もある。

 気候が不安定期に入る際には、若干の兆候があった後に急激な変化が見られる。現在、気温の上昇が著しくなっており、新たな変動の兆候の可能性もあると言えよう。

 変動の時期も内容も予想し難いが、早晩、高温化が急激に起こるとによる大変動の可能性は否定できない。これによって、農業生産に大打撃があり、日本でも飢餓が現実に起こる可能性もある。また海進で海岸線にある居住地の大量消滅もあり得よう。

 このような変動には、殆ど対応できず大混乱となる可能性が大きい。例えば日本では近年中に人口1000万人の生存も無理となる可能性もあろう。そして国際的混乱も伴うことになる。

 それでは、今、具体的にどう対応するか。温暖化ガスの排出ゼロ化、食糧自給力の引き上げ、さらには、人口の削減などもあるかもしれない。しかし、いずれにも真面目に取り組んでいない。人口については増加を模索している。防災基盤の強化は若干力を入れているのかもしれない。

 しかし、仮に勢力的に取り組んでも大混乱は避けられないのでなかろうか。人類はこうした変動には殆ど対応できず、今日の社会は崩壊していく可能性もかなり大きい。
 その後の社会像としては、少数の人々が、多様な食料を摂取しながら生き伸びることになるのだろう。

 取り敢えず、現時点で可能な努力は当然していかなければならないが、開き直って受け入れる準備も必要であろう。例えば飢餓にどう対応するか。あるいは、高齢者が身を引く発想さえ必要なのかもしれない。

 小生は、団塊の世代で後期高齢者となったところである。残り10年くらいで人生を終えれば、こうした混乱はある程度避けれるかもしれない。しかし、高齢者は逃げ切るのみというのは、許されるのか。団塊の世代が無責任世代であることが顕在化しつつあるようだ。


Apr.28,2023

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