解けない課題現在、我々日本人は、そして人類全体についても、解決が極めて困難な多くの課題に直面している。中でも、地球温暖化、経済的格差拡大、国際平和維持は、緊急を要する困難な課題である。 さらにこれらは相互に関連しており、対応を一層難しくしている。 ここでは、その基本的構造を概観する。 1.地球温暖化 異常気象がここまで進んでいるのに生産活動、消費活動でも、まだ大量のCO2の排出を続けている。 今後、さらに異常気象は激化し、食糧難や疾病の蔓延そして多様な争いの勃発へと進んでいくであろう。この混乱からは、誰も逃れることはできない。 こうした中で、再生可能エネルギーの活用は当然だが、基本的には、多様な経済活動全般を鎮静化すべきことは明らかである。しかし、殆どの人は、これを受け入れていない。 仮に世界の人類一人当たりの排出許容量という発想の下で社会正義を鑑みれば、そして先進国ではこれまで多量のCO2を排出してきたことを加味すれば、先進国の人は、即座に排出をゼロに近づけるべきことは明らかであろう。 CO2排出削減のための諸施策についても、低排出行動の促進策として低排出行動奨励策よりも高排出行動否定策をとるべきであろう。例えば旅行や自動車利用を助長するような策はもってのほかであろう。また、人口の維持増加に拘ることも逆向きの発想である。 こうした方向性には多くの困難が伴うが、一刻の猶予もないことは明らかである。 2.格差拡大 経済格差の拡大については、経済全体を大きくする中でその成果を分け合い、低所得層に均霑(トリクルダウン)していくということを指向している。しかし、この方策は成果を上げていない。むしろ、新たな生産活動・消費活動を起こそうとする者への支援は、その活動に至らない多くの人を取り残しており、経済格差を助長している。 これは、経済成長が自己目的化されている結果と考えられよう。 環境問題にも鑑み、経済活動の鎮静化に軟着陸する経済構造への改革こそが求められている。鎮静化の中での分け合いなど、極めて困難な課題であるが、これこそ新しい資本主義の目指すべきところであろう。 高所得者は、一層多くの消費活動をする者であり、温暖化ガスの大量排出者ともなる。一人当たりのCO2排出許容量に鑑みれば、一定以上の所得は正義に背くことは明らかである。歴史的には、J.ロックが所有権を明確にしたとされるが、地球全体での限界に鑑みれば、CO2排出権の所有には限界が在ることを自覚しなければならない。 3.国際平和維持 今日、軍備は、いずれの国にあっても常に国防のためと主張される。 2022年末の世界情勢では、ある程度の軍備は必要という発想も避けられない。しかし、我が国においては、軍備をどのように表現しようとも憲法違反は明らかであり、この点を修正すべきことは避けられない。 一方で、我が国は、多様な外交努力を重ねつつ平和への貢献を明確にする中で、やむなく軍備を整えることを他者からも理解されるよう努めなければならない。しかし我が国の平和への貢献は極めて乏しく国際社会で相手にされない状況にあるのではなかろうか。また外交の展開も理念がはっきりせず、アメリカの要請にどう応えるかという発想が見え隠れするのみである。 これらの困難な課題については、包括的な議論が必要であり、果敢な政策展開が必要である。為政者はこのために存在し、政党はこの議論を興す役割を担っている。しかし、与野党ともに、ポピュリズムに流されるのみで、包括的で整合性の取れた構想の提示をしようとしていない。このため、政権与党がどのような失態を繰り返してもその立場は揺るがなくなっている。 他方、各人の日常の生産活動、消費活動においても真摯な対応が必要であることは言うまでもない。また、政治をただしていく発言も必要である。ただ、これには限界も多く、個々人は、世界に詫びながら生活していかざるを得ない状況となっている。 Dec.23,2022 表紙に戻る |