文化心理学

 北山忍著『文化が違えば、心も違う?』岩波新書2025年を読んだ。
 本書は、世界各地域の人々の心理状況を地理的・歴史的背景等を持つ文化により解明したものである。

 各地域の心理状況を簡単に説明することは困難だが、概略を示すと次のとおりとされている。
・西洋 独立
 プロテスタンティズム・啓蒙思想から個人の自主・自由
・サブサハラ 自己促進的協調
 厳しい生活環境の中で、現存する目標を達成し仲間に寄与
・中東・北アフリカ 自己主張的協調
 伝統的遊牧生活様式・イスラム教のもとで集団を外的から守る自己主張
・ラテンアメリカ 表出的協調
 多民族・多言語の中で感情表出により相互理解
・南アジア 議論・弁論による協調
 文明のクロスロードで紛争解決のための弁論・議論
・東アジア 他者中心的協調
 稲作文化の下で、紛争回避のための協調、感情表現は抑制

 これらの内容を導いた、研究手法については、アンケート、各種心理実験、遺伝的特性、脳の部位の大きさなど多様で、それなりに科学的裏付けを見出せるものとなっている。
 ただし、このような内容は、各地域の人々の心理状況の中心的傾向であり、個々人の分散は大きい。であっても、グローバル化した社会の諸課題解決のヒントになろう。

 ところで私自身が考えている私自身の心理状況は次のとおりである。
 宇宙誕生から今日までの経緯に鑑みて、人生に根源的な目的などない。このため自分が目覚めた時点で何をしたいか自省するしかない。それは遺伝的要素に加え生まれ育った環境によって形成されたものである。であるとしても、東アジア的な協調性、抑制的感情表現などは、私においてもあてはまっているようだ。しかし、西洋的な教育を受けたため、自主・自立の意識は強い。また、自分自身は苦手だが、協調のために、ラテンアメリカ的感情表出に共感している。
 結果として、コンビィビィアルな社会(共愉社会)を標榜している。

*「コンビィビイアル」は、ラテンアメリカで活動した哲学者I.イリイチの言葉である。あまり流行らないのは、西欧の文化に馴染まないからかもしれない。

Sep.19,2025

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