生きがい

 宇宙の誕生以来、銀河系・太陽系・地球の形成、生物の発生・進化、ヒトの誕生・進化、経済社会の構築と展開・進化してきたが、これらは全て素粒子の相互作用(縁起)によって起こったものである。この意味で、こうした展開・進化に目的などない。つまり我々の生きることに目的などない。
 ただ、宗教等から目的を得ている人、所得のための行動などを自己目的化している人も多い。こうした目的は一心不乱に生きていくことを支えるが、生きることの楽しみを喪失しがちである。

 我々は本来、目的に縛られる必要などない。日常のささやかな喜びを楽しみ、生きることそのものを満喫し、生きること自体の実感として捉えていればいい。
 これは、日本文化にある「生きがい」であり、新渡戸稲造「武士道」、岡倉天心「茶の本」はこれを述べたものらしい。
 こうした生きがいを持つことは生きることの安全基地を得ることに繋がる。ちなみに、これは発達心理学のSecure Base(安全基地)に相当しているのだろう。

 そして、このような生活を送れる環境が自らの周りにあれば幸いである。もっともどんな環境の中でも生きがいを見つけていけばいいのだろう。
 平穏に生きれる環境をどう求めていくか、形成していくかは大事な課題である。
 生物にはペッキングオーダー(力の序列)を求める習性がある。種としての存在は、これによって実現している。他方、他を支える(利他的)行動に喜びを感じる側面もある。ヒトではドパーミンが出るそうだ。
 この利他的行動は、その人の生まれ育った環境の中で育まれるものであろう。特に周囲の人からいろいろと支えられ、生活の安全基地を形成していることが必要である。
 このため、平穏に生きれる環境を築くには、幼少期からお互い支え合って生きていく社会が必要といえる。

参考図書 茂木健一郎著「生きがいの見つけ方」PHP新書2025年

Jul.28,2025

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