存在と縁起「マルクス・ガブリエル著『時間・自己・幻想』PHP新書2025年」を読んだ。内容全体は、分かり難いのだが、仏教等について語っていることについて、小生なりに考えさせられる点が幾つかあった。◎縁起 本書では、「色即是空、空即是色(物質的存在要素それ自体に実態はなく、実態がないまま縁起的存在として、物質は生成され、現前する)」について、実体ではなく関係性が基本と考えれば、そのような存在論になるとしている。全ての物、そして人間社会も縁起による存在と言えよう。 ところで、「江馬一弘著『電子を知れば科学がわかる』講談社BlueBacks2025年」では、電子は、多様な形で原子を繋いでおり、これによって多様な物質を形成、変形させていることを説明している。これは縁起が物を形成させていることであり、色即是空、空即是色と重なる。これは、単なるアナロジーでなく、我々ヒトのみでなく、宇宙全体の存在について語っているのではなかろうか。 ◎宗教は必要か 本書では、「人類の歴史を見れば死後の生や精神世界への信仰が見られた」ことを理由に、宗教は必要だとしている。 小生の発想では、自分なりに正しく生きるためには、真実・正義を限りなく探り続ける必要がある。このため、取り敢えずの止り木として虚構ではあるが自分なりの考える前提(=宗教)を持ちたくなる。自分としては「皆と仲良く生きる」ことを欲しており、これを核とした宗教を持つこととしたい。 (ここでは、宗教を規範意識として捉えていることになるかもしれない。) そして、同時に他者の多様な宗教を認めていく。こうした考えが広まれば、そんな環境の中で育った人は自分なりの宗教を身に付けるようになろう。 なお、このための象徴があれば、いろいろと発想し易くなる。例えば、小生の場合は、仲良く生きる象徴として、カルガモを選びたい。 以上が小生の考える宗教必要論となる。知的操作を経ているが、原初的なトーテミズムの世界へと導かれる。 ◎悟る 本書では、「悟る」とは俗世に身を置きつつ、偏りのない視点から俗世を見ていることとしている。 これを脳科学の観点から見れば、認識バイアスを無くすということであろう。このためには各自なりに真実を考え続けることが必要であろう。 Jul.20,2025 目次に戻る |