シンボルエコノミー

 「水野和夫著『シンボルエコノミー−日本経済を侵食する幻想−』祥伝社新書2024年」を読んだ。
 現在の経済活動に起こっていることを国内外のデータ分析に基づき、長期的な経済変動の歴史を背景に解説しており、極めて興味深い。

 取り敢えず、メモを残して置く。
 多少まとめ方に誤解があるかもしれないが要点を整理すると次のとおり。
・コアインフレ率(食料とエネルギー価格を除く総合消費者物価の上昇率)は低水準で横ばいの時代となっている。
   異次元緩和はこれを認識していない。
・得意分野に特化できる人口小国の一人当たり国民所得は高くなり得るが、人口大国には困難である。
   我々は、国民所得の相対的地位低下をこれを考慮せず議論している。
・グローバル経済下で高い利潤率を追及するとシンボルエコノミーが肥大する。
   日本はリアルエコノミー指向である。
・経済活動の基盤を決める中心はニクソンショックで失われている。
・こうした中でビリオネアが生まれ、バブル経済は頻繁に起こりうる状況となっている。

 経済的格差の拡大、国民の分断を方向転換していくためには、これらを認識し抜け出すことが必要である。
 経済界がこのための策を取らないのであれば、政府が制度改革等により対応していかざるを得ない。

 しかし、政府はNISAのように個人の投資を助長するなど逆進的な方向違いの政策を展開している。
 野党は、こうした問題を的確に指摘していない。

Jan.20,2025

表紙に戻る