睡眠の起源

「金谷啓之著『睡眠の起源』講談社現代新書2024年」を読んだ。
 本書は、著者のこれまで研究生活史を語ったもの。著者は、大学院生であるが、ヒドラに睡眠があり、睡眠を司る遺伝子212個を特定した。なお、この遺伝子は、ショウジョウバエと共通する。ちなみに、この成果は、論文として、Science Advances誌に掲載されている。

 本書をヒントに睡眠についての私なりの解釈を整理しておく。
 神経系を持つ動物は、生きていくために、神経シナプスを形成・維持し続ける必要がある。この際、神経シナプスのその他の機能を抑制せざるを得ないようだ。結果として睡眠状態に入り込む。他方、覚醒状態とは外界の情報等を取り入れての活動である。動物にとって、この2つの活動のどちらが本旨と言うことはできない。
 なお、この睡眠状態と覚醒状態の切替わりは、一般には、昼夜のサイクルと同期しているようだ。こうした性質をヒドラも持っているというのは、この性質は動物が初期に神経系を獲得した際に形成されたのであろう。
 覚醒状態には、主観的意識が伴うため、一般には、こちらが生きることの本旨とされている。しかし、主観的意識の正体は未だ明らかでない。主観的意識は、活動に伴って事後的に起きているようで、覚醒時の活動の傍観者である。我々にとってなくてもよさそうにさえ思える。

Jan.05,2025

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