〇〇ファーストの危うさ


 民主主義的集団であれば仲間内(内集団)で支え合うのは当然だろう。しかし、〇〇ファーストと宣言するのは極めて危うい。

 人類は長らく、文化を共有した小さな集団(内集団)で暮らし、多様な支配関係があったとしても、基本的には、互いに助け合ってきた。これに属さない他の集団(外集団)とは日常的な関わりが薄く、文化も異なり偏見を伴いがちであった。そして外集団は多くの場合に敵であり、攻撃し、結果として殺しても構わない存在であった。

 こうした中で、人権や人道主義という概念が生まれ、外集団も同じ人であり、例え文化が異なろうとも同じ扱いをしようという理性が生まれた。ただし、これは、たかだか18世紀のことであろう。そして我々には、未だこの理性に感情が付いていけないことがしばしばある。かなり最近まで、戦争や帝国主義的支配は避けるべきと考えていなかった。

 第二次世界大戦後、世界の多くの国は植民地の解放・独立等に向かった。国際的なルールとしては、帝国主義、侵略戦争が否定されることとなった。

 〇〇ファーストはこうした歴史に逆行しようとしており、外集団を尊重することを放棄するものでる。これは、本質的には、極めて厳しい状況を生み出すものである。

Aug.04,2025

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