意識の正体

 「渡辺正峰著『意識の脳科学』2024年講談社現代新書」を読んだ。
 意識についての考察が興味深いのでメモしておく。

 人は夢を見るが、ヴァーチャルアリティが普及し始めている今日、夢を仮想現実と呼ぶことは容易に理解できよう。ただ、夢は視覚・聴覚等の情報を外部から得ず、脳内の記憶を使っている。そして外部からの情報に基づいたものが、まさしく現実の認識である。しかし、視覚情報や聴覚情報の脳内での処理に鑑みれば、現実の認識こそ仮想現実と呼んでもいいであろう。
 そして、生物(動物)は、この仮想現実によって、今後起こること(未来)を予想し、既に脳が持つ記憶を総動員して、未来に対処することとなる。これによって、生物の生存が極めて有利になり、結果として、一層豊かな仮想現実を描くよう進化してきた。
 実は、この説明に意識という言葉は介在しない。つまり、意識は、生きていくために進化した脳に描かれる仮想現実のおまけということになる。あるいはこの仮想現実そのものを意識と呼ぶことにしてもいいのかもしれない。敢えて細かく定義するならば、仮想現実の中で長期記憶として保管しようとするものとなるかもしれない。
 このように捉えると、全ての神経系を持つ生物は、意識を持つということになるのかもしれない。

 参考;ライプニッツによる風車小屋の意識の例え
 風車小屋に入り込んで風の力で粉をひく仕組みを余すところなく解明しても、風車小屋の意識は見つからないだろう。脳の仕掛けを解明しても、同様のことであろう。

Jul.23,2024

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