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第5章 ゆとりある郷土
第3節 交通

第1項 交通量
―特に多い自動車トリップ数―

(1) 交通総量
(2) 域内交通
(3) 域外交通

 以下の内容は、コロナ禍により、2020年から大きく変化していると予想される。

 交通には、人の移動、物財の輸送がある。このうち人の移動には、公共交通の利用と自動車の利用などがあり、これに必要な基盤施設の整備維持と公共交通の経営が課題となる。
 富山県では自動車の利用が特に多いことは周知のとおりであるが、公共交通の利用(旅客数)と自動車での移動(自動車トリップ数)の総数を見ておく。


(1) 交通総量
 公共交通等の旅客数が、国土交通省「旅客地域流動調査」に掲載されている。これは、各種統計からの積算推計したもので、都道府県内、都道府県相互間の年度内の旅客数である。最新統計は、 2019年度値であるが、精度は極めて低く、目安を得るものと理解しておく必要がある。

 各都道府県発人口当たり旅客総数を見ると、当然ではあるが、公共交通の整備された大都市地域で大きくなっている。
 富山県発の旅客数は、64,361千人/年で、人口当たりでは、61.6人(回/年)となり、都道府県の中では26番目と中程にある。

(Sep.26,2021Rev.)



 一方、自動車のトリップ数が、国土交通省「全国道路・街路交通情勢調査 、自動車起終点調査(OD調査) 」に掲載されている。これは、平日、休日のサンプルによるもので、都道府県内、都道府県相互間の年度内の自動車トリップ数であり、貨物車・乗用車を含む。最新統計は、 2015年秋に実施されたものであるが、これも精度は極めて低く、目安を得るものと理解しておく必要がある。

 人口当たり自動車トリップ数が多いのは、当然ではあるが、大都市以外の地域である。
 富山県発の自動車トリップ数は、1,961,856台/日で、人口当たりでは1.84(台/日)となり、都道府県の中では、3番目の大きさになっている。


 ここでの旅客数と自動車トリップ数は、把握の仕方が異なり直接比較できないが、代替関係にあり、統計数値は極めて高い逆相関となっている。



(2) 域内交通
 富山県で2km以内に鉄道駅がある居宅の割合は64%で、都道府県の中では11番目となっている。
 これは、富山県内の居住地が全体としてコンパクトにまとまっており、古くから鉄道を整備し、大都市圏地域に次いだ鉄道網の充実した地域となったものである。ちなみに大都市圏の都府県は、東京圏の1都3県、大阪圏の2府2県、愛知県、福岡県で合計10となる。


 しかし人々が自動車を所有するようになると同時に、道路網も整備され、今日では日本有数の自動車社会を形成している。


 現在、公共交通を利用するのは、主として生徒・学生等の定期利用者となっており、若年人口の減少が続く中で、公共交通の経営の維持、利便性の確保が次第に困難になりつつある。
 一方で、今後、人口の一層の高齢化によりいわゆる交通弱者が増加するため、公共交通の新たな整備が必要となっている。
 また、新幹線の開業による新たな鉄道の経営も課題である。

(Sep.26,2021Rev.)



 県内発着(起終点が県内)の自動車トリップ数のうち、車種別では、乗用車が80%を占めている。また、目的別では、通勤・通学が19%、私事が24%であり、その他仕事関係は52%と約半分を占めている。



(3) 域外交通
 県外への公共交通等による旅客数は、石川が特に多いが、次いで東京となっており、さらに大阪、長野、愛知、岐阜と並んでいる。
 交通手段では、東京、大阪ではJRが多いが、東京・北海道は航空も利用されている。なお、2015年3月の新幹線の開業によって、東京圏への航空がJRへと移っており、空港の経営が課題となっている。

(Sep.26,2021Rev.)



 県外への自動車トリップ数については、当然だが石川が突出している。その他では、岐阜、新潟、福井と並び、次いで愛知がある。大都市圏では、大阪、兵庫、神奈川と並ぶが、東京はかなり少ない。これは公共交通の利便性が高いためであろう。
 車種別では、隣接県では乗用車の比率が高いが、遠隔の大都市圏は貨物車の比率が高くなっている。

 目的別では、石川を始めとして隣接県で通勤・通学があり、大都市圏では営業、帰社・帰宅が相対的に多い。これは、車種の多寡と対応している。


 かなり乱暴な比較であるが、上述の旅客数を日当たりに換算し、自動車トリップ数の乗用車と比較したものが右図である。
 石川を始め岐阜、新潟、福井等の近接地域では自動車が過半を占め、東京、大阪等の遠隔地では、旅客が自動車の倍以上となっている。なお、愛知はこれらの中間にある。
 この仕分けについては、それぞれの地域への道路、公共交通の利便性とともに、近距離であれば自動車、遠距離であれば旅客という選好があることを示している。


富山発日当たり交通量
   図の範囲外

  着地
乗用車
旅客
比率
全国1,562,990 182,269 8.58
富山1,541,071 162,953 9.46
石川14,297 5,490 2.60
県外21,919 19,316 1.13
富山・石川以外7,62213.826 0.55



(統計データ)

 交通手段の選択については、高齢社会の中で近距離移動での公共交通の必要性が高まっている。また、新幹線が整備された中で、今後の動向に注視が必要である。さらに、温暖化ガスの排出削減に主体的にどう取り組んでいくかも大きな課題である。
 単刀直入に述べれば、飛び恥とされる航空は手仕舞いし、自動車の利用は控え、鉄道主体に切り替えていく必要がある。これには生活内容、産業構造、都市構造等の困難な改革が伴うが、何時までも避けていることはできない。

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(Sep.26,2021Rev./May.31,2020ReEd.)