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空き家考
―住宅再生―

 このページを10年ぶりに読み返したが、状況は全く変化していない。
 社会が変化していないのか、小生自身に進歩がないのか、いずれにしろ課題の解決は遠そうだ。

(May.01,2024)


 人口の減少と高齢化、さらには財政的限界、地球温暖化あるいは食糧需給への懸念などの中で、今後の街創りについては、既存の街をいかしつつ、コンパクトにまとまった生活空間を形成していくことであろう。
 特に、住空間については、まず住宅地をこれ以上拡大しないことが大前提であり、さらに既存の住宅を効果的に活用していく必要がある。

 住宅地については、少なくとも現在の土地利用計画を厳格に守っていかなければならない。市街化調整区域や非線引き都市計画区域での農振農用地区域の宅地化は、厳しく制限していく必要がある。これまでは、限られた関係者の話し合いのみで、宅地開発が許容され積極的に進められる面があり、行政にあっても個人の財産権の制限を配慮するとして開発案件の否定を避ける傾向があった。しかし、今後の人口動向等に鑑みれば住宅地を拡大していくことは、住み難い地域社会の形成に直結している。土地は限られた資源であり、個人の権利は相当程度規制されてしかるべきであろう。また、新たな居住者にあっても、郊外の新規住宅団地などは、代を超えての維持は困難であることを理解しておく必要がある。
 なお農地保全の視点については、農地の集約、大規模化による企業的経営としての農業の実現のために、農地保有者が転用期待を抱かず農地としての維持を指向していく必要がある。

 住宅については、既に、空き家の増加が目立ちつつある。現在、景気浮揚策と称した新設住宅への支援制度が種々あるが、これは、抑制される必要があろう。持家促進策の展開ももはや必要ではない。
 空き家については、まず個々の所有者の管理責任を問う必要がある。これを支えるためには、住宅の流通市場を確立していく必要があり、不動産関係事業者は住宅インスペクター(住宅の評価・査定者)の能力を持ち、既存の住宅がそれなりに評価されるようになる必要がある。
 一方、地域に住む人による積極的な工夫の中で、既存住宅の有効な活用が進められる必要がある。地域の人々のいろいろな活動を通じた繋がりの中で、発案され実施されていくことであろう。新たな移住者の呼び込みは、人口減少対策とも兼ねて、いろいろと工夫されている。また、共同居住(シェアハウス)なども見られる。社会福祉施設としての活用も散見される。さらに地域の人々がいろいろと繋がる中で、その活動空間としての活用も可能である。公民館的な利用としてのシェアリビング、食事の共同化の場としてのシェアダイニングなどもあり得よう。これらは、地域の高齢者が繋がって活きていく場の整備ともなる。
 積極的な活用ができず廃屋となった際には、所有者が責任を持って更地化し、さらには土地を公共に返上することが本来と考えられるが、この促進のためには、税制での工夫や廃棄のための支援も必要かもしれない。他方、更地化した宅地については、地域の人々の手で、植物(花、果物、野菜)の栽培などを行い、活き活きとした地域空間の維持に努めていくことも必要であろう。

 人口減少の中で、住宅地域の生き残りは、地域間の競争となってくると考えられるが、地域の人々の繋がりのなかで、既存の住空間が積極的に活かされてこそ、持続可能となろう。

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(Dec.20,2014)