関連項目に戻る
災害統計の地域間比較 ―困難な比較―
今日では、多くの地域で、自然災害の発生はまれな事象となっている。そして年々の発生件数の統計的数値はひとたび災害が起これば跳ね上がり、大数の法則が働かず、平均値などの統計量は意味が不明確なものとなる。このため県での発生の程度、全国の中での位置付けなどを明確に語ることは困難が多い。
(1) 集計期間の選択
まず、年毎の変動が激しいため、一定の期間をまとめて評価する必要がある。例えば気象現象では30年間の平年値を取っているが、自然災害についてもこれ以上の長さが必要であろう。これでも多分に恣意的な期間となってしまう。
基本的には、一定期間の被害に関する合計値では、その期間内での大規模な災害の有無に左右されるため、地域の自然災害の多寡を評価するには相応しくない。
(2) 率(原単位)の選択
都道府県間の比較のためには、罹災件数等を人口当たりや面積当たりに換算し被害率として比較できるようにする必要がある。
しかし、この分母となる指標に何を使うか、総人口か世帯数か、あるいは総面積か可住地面積かなど選択の余地がある。人が住まない地域の災害を含む場合などには、都道府県の相対評価は、あいまいなものとならざるを得ない。
(3) 全国値との比較
また、全国平均に対しての位置付けをすることも多いが、全国の総数から求めた被害率が都道府県の中程に位置する訳では必ずしもない。
全国値が、一部の特に大きい地域の値によって偏ってしまい、特段の災害がなければ、かなり少ないものとなってしまう。
全国値として都道府県毎の率の平均をとることもできるが、この場合の全国値の意味は誤解され易い。
(4) 都道府県順位
率の都道府県順位で表現することも可能であるが、率の分布に偏りがあり、率の僅かな差で順位に大きな差がでる可能性がある。
(5) 推移の多重折れ線グラフ
年々の推移を折れ線グラフで描くこともできるが、各地域が多数のスパイクを持ったグラフとなり、地域の相対的な位置を読み取ることは難しい。
スパイクを基本としたグラフでは移動平均に換算しても意味が分からなくなる。
当該地域に大きな災害がなかったことなどは読み取れるが、このような地域がどれくらいあるかは読み取りにくい。
なお、全国値と当該地域のみの推移の折れ線グラフであれば、長期的な変化を見ることはできる。
(6) 昇順配列多重折れ線グラフ
上述のような問題点に対処するためには、、年毎の値(率)について各地域別に昇順に並べそれを縦軸に対数を採った折れ線グラフに描き、特定地域のグラフを色付けすると、一定規模災害以上(以下)の災害のあった年数、最大の災害規模などを読み取ることができ、各地域の災害の多寡を判断することができる。
この図を読むには、まず対数表示であることを十分に念頭に置く必要がある。また、折れ線が左下で途切れているのは、災害がまったくなかった年数を意味している。
なお、全国値で典型的に見られるように、人口・面積等の規模の大きな地域ほどグラフは横に寝ることに留意が必要である。また、この図では当然であるが、時間的推移は読み取れない。
関連項目に戻る
(Feb.24,2015)
|