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参考 地域創りの意思決定
第1節 歴史認識
第3項 歴史の転換点

3.社会的ジレンマの発生と対応

発生

安定社会の規範
 従前の社会では、限られたコミュニティの中で、社会を維持する協調的行動が、十分に採られた。
 これは、意図的というよりも、安定したコミュニティの中で、社会規範に則った生活をおくることによって実現していた。

利得最大化の行動
 しかし、時代の変化、社会の複雑化の中で、従前の規範はそのままでは通用しなくなってきている。
 かといって理念的な規範に則り、社会的に整合性を持った行動を誰もが採る訳ではない。
 むしろ、コミュニティの紐帯が弱まった社会では、ゲームの理論が述べるように、各人(プレイヤー)が、その利得を最大化するように行動し、社会規範とは縁がない。

ジレンマの発生
 ゲームの理論では、ここで囚人のジレンマの問題が発生する。
 現実の社会でも、視野の狭い個々人の利得最大化の行動が社会全体では好ましい結果を生まないという社会的ジレンマが生じる。
 これは、経済学における合成の誤謬に対応する。

対応

信頼行動の発生の可能性
 このようにして生じた多様な社会的ジレンマをどのようにして解決していくか。
 ゲームが長期間展開されるとなると、信頼に基づく安定した行動が採用されるようになる。このため繰り返しゲームや身近な仲間とのゲームの場合、単純な利得表は意味が薄れ、直感的に信頼行動を採る集団の方が利得が多く(より良い成果を収めるように)なる。
 現実の社会でも、協調行動が発生する可能性は十分にある。
 むしろ、進化心理学的には、この協調行動の組み込みによって人類が成長したとさえ言われる。

ジレンマの解明
 社会的ジレンマに対応していくためには、複雑化した社会の中で、そのジレンマの内容、発生メカニズム自体を明らかにする必要があろう。多くの人は、課題を狭い視野で捉え、社会的ジレンマとしての認識さえ乏しい。
 また、包括的な構造について、多くの理解を得ることはある程度可能性があると考えられる。

協調行動の促進
 ただし、共通理解に達しても、各自が即座に協調行動を採る訳ではない。いわゆる総論賛成、各論反対の行動が起こる。
 このため、取り敢えずは、協調的行動がより良い利得を得るよう社会制度を整備することを目論む必要があろう。
 なお、多くの人は誰もがするからするといった追随行動を採るので、協調的行動の促進には、その臨界点を超すことを目指せばよい。一定の人が協調行動をとると後は雪崩現象で多くの人が協調行動を採ることが期待される。

紐帯の再強化
 なお、コミュニティの紐帯を強化することも考えられよう。これまでの社会の近代化の流れの中では、その方策は見つからない。しかし、サイバースペース上に有意義なコミュニティ形成の可能性を探ることはできないだろうか。
 
 
社会的ジレンマの発生と対応の方向・事例
 
少子化 公共交通の衰退 学生の学力低下
コミュニティでの協調行動(旧来の規範) 結婚適齢期で結婚し、子どもを産み育てるのが当然 (清貧の思想は遥か昔に消失) 教養としての幅広い知識の習得
利得最大化行動 膨大な子育てのコストは回避
老後は社会の支援を期待
都心でも車で利用する方が便利
排ガスは垂れ流し
大学当局・受験生双方にとって好都合として受験科目数の削減
社会的不都合
(ジレンマ)
家族を形成し、次代を担う子どもを育てる人が減少 都心の混雑、車の占用から集約度の高い都市形成が困難化
駐車空間により住宅地の貧困化
公共交通利用衰退の悪循環
燃料費高騰時の生活の脆弱化
個人として教養の欠落・個人としての人生の貧弱化
社会としての知的思考力の低下(問題解決力の低下)
大学教育の困難化
協調行動の促進 子育て放棄税(社会的費用として徴収)
高齢者の社会的支援を削減・少なくとも介護保険で家庭内支援を阻害しない
公共交通の便の拡充、公共交通で利用できる都心の形成
集客施設の都心立地
駐車料金支援と同様の公共交通来訪者への支援
都心での車利用の制限
車関連の税等の負担拡大・道路等整備の引き延ばし
必要とする職種の採用試験で知性の厳しい評価
(厳しい評価によりエリート層の肯定)
新しいコミュニティでの協調行動
(社会規範の再形成)
子どもを育てること、高齢者を支えることは、各人(家族・地域社会)の役割であることを再確認 都市の賑わいの形成・地球環境の保全の視点から日常生活は公共交通利用が常識化
パークアンドライドの常識化
知識偏重から教養志向へ
知性の評価

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(Feb.11,2016Rev./Jul.01,2000Orig.)