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表紙
参考 地域創りの意思決定
第1節 歴史認識
第2項 歴史の流れと日本
2.情報文明論
公文俊平著 『情報文明論』 NTT出版 1994年4月
文明とその進化(文明と文化/文明の多系的進化論)/社会システム(主体/主体間の相互作用/複合主体/社会システム/社会システムとしてのネットワーク)/情報文明の諸相(日本の文明と文化/近代文明の進化過程/情報文明の諸相)
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現代の社会には困難な課題が多々あるが、それらが無事解決され、望ましい社会が実現していくとした場合の一つのイメージとして紹介しておく。
解説に替えて、本書の「まえがき」の一部を掲げておく。
この本は、"近代文明"を、それ以前の"宗教文明"および、それに続くと思われる"智識文明"にはさまれた文明だと解釈する立場にたって書かれている。近代文明が限定・発展指向型、未来指向型の文明であるのに対し、宗教文明も智識文明も包括・存続指向型、過去指向型の文明だと考えている。そして、近代文明自体は、軍事化、産業化、情報化の三つの局面を経ながら発展していく、"初期軍事・産業・情報文明"だととらえている。
三つの社会ゲームの対照表
社会ゲーム | 威のゲーム | 富のゲーム | 智のゲーム |
前提: 基本権 意識革命 技術突破 | 国家主権 独立 軍事・航海革命 | 私有財産権 個我の確立 産業革命 | 情報権 間柄の確立 情報革命 |
プレイヤー: | 近代主権国家 | 近代産業企業 | 近代情報智業 |
目標: 個別的手段 一般的手段 | 脅迫/強制力 領土・植民地 威(プレスティッジ) | 取引/搾取力 商品 富(ウェルス) | 説得/誘導力 情報・知識 智(ウィズダム) |
獲得行為: 個別的手段 一般的手段 | 戦争 外交 | 生産 販売 | 研究 普及 |
獲得の場: 個別的手段 一般的手段 | 戦場 国際社会 | 工場 世界市場 | オフィス 地球智場 |
ルール: | 国際法・戦時国際法 | 商法・民法 | 情報権関係法 |
他主体: | 前近代国家・植民地 | 家計 | コネクティブ |
ダイナミックス: 環境形成 技術形成 主体形成 システム形成 | 封建化 軍事化 国家化 国際化 | 商業化 産業化 企業化 市場化 | ネットワーク化 情報化 智業化 智場化 |
この本の表題とした"情報文明"とは、近代文明の第三の局面に他ならないのである。そして、来るべき智識文明は、近代文明の諸要素を再編成・再統合して構築される、"後期軍事・産業・情報文明"と呼ぶのが適切な文明になるのではないかというのが、私の予想である。それは丁度、宗教文明が、それに先立つ"初期農耕・牧畜文明"の諸文明要素を再編成・再統合して構築された、"後期農耕・牧畜文明"と呼ぶのがふさわしい文明だったのと同じことである。
近代文明は、確かに、そのグローバルな普及力や、環境容量との関係では、ある種の"成長の限界"に到達しつつあるようだ。その限りでは、智識文明への転換を構想する意義は大いにある。近代文明はまた、"近代化"をどこまでも推進していくというよりは、近代化を否定して偉大な宗教文明の本来の原理への復古をめざす"原理主義"に立脚する非近代文明との共存に腐心しなけれぱならなくなってきたことも、間違いないだろう。しかし、そのことは、近代文明の発展の可能性がすべて汲みつくされてしまったことを意味するものではない。近代化の第二の局面である産業化自体も、まだまだこれからその第三の発展段階である情報産業段階に入ろうとしているところである。村上泰亮のいわゆる"スーパー産化"の勢いは、今日むしろ加速しつつあるといってよい。同時に、近代化の第三局面にあたる"情報化"あるいは、村上のいう"トランス産業化"の動きも、しだいに顕著になろうとしている。智識文明への移行は、近代文明がその発展の余地を極限まで追求する中で初めて可能になるという思いにつき動かされて、私はこの本を書いた。・・・・
近代文明三つの発展局面
| 技術的突破 | 複合主体 | 基本権 | 相互制御の 基本型 | 大社会 システム | 社会ゲーム |
第1局面 軍事化 | 軍事革命 | 主権国家 | 主権 | 脅迫/強制 | 国際社会 | 威のゲーム |
第2局面 産業化 | 産業革命 | 産業企業 | 財産権 | 取引/搾取 | 世界市場 | 富のゲーム |
第3局面 情報化 | 情報革命 | 情報智業 | 情報権 | 説得/誘導 | 地球智場 | 智のゲーム |
上述のはしがきに続いて、著者が本書の構想に至ったいきさつとして、ローマクラブ報告書「成長の限界」のゼロ成長論への疑問及び、カール・ポラーニ「大転換」の転換過程の到達点としての混合経済体制に対する不満が契機となったとしている。
現在、経済活動が低迷する中で、安定社会のあり方を求め元禄文化等を再考する動きなどがあるが、近代文明の新しい局面に入りつつあると捉える方が適切に思える
この適切というのは、正しいか否かという面もあるが、願望としての意味も強い。積極的に形成していきたい社会として検討していく価値もあるのではなかろうか。もちろん意図的行動によって社会が変わっていくなどと安易に考えているつもりはない。
産業化の三つの段階
| 19世紀システム (1775〜1875) | 20世紀システム (1875〜1975) | 21世紀システム (1975〜) |
中核技術 | 物質処理: 製鉄 | エネルギー処理: 電動機・内燃機関 | 情報処理: コンピュータ・通信 |
75-00突破準備 ネットワーク | 運河 | 電力・電話・無線 | B−ISDN |
00-25突破段階 主導産業 | 綿工業 | 重化学工業 | マルチメディア グループウェア |
25-50成熟準備 ネットワーク | 鉄道 電信 | ハイウエー 空路 | サイバースペース |
50-75成熟段階 主導産業 | 鉄道業 | 自動車・家電 | VR/AL |
企業組織 | 個人企業 | 階層的大規模組織 | ネットワーク組織 |
産業組織 | 自由競争 | 寡占的競争 | 協働的競争 |
機能分業 | 生産者/消費者 | メーカー/ユーザー | サーバー/クライアント |
国内経済体制 | 自己調整的市場 | 規制された市場 | 市場+ネットワーク |
国内政治体制 | 自由主義国家 | 福祉国家 | 企業=智業協働基盤の 新自由主義 |
国際経済体制 | 自由貿易・金本位制 | IMF/GATT体制 COMECON体制 | 地域ブロック体制 |
国際政治体制 | 勢力均衡政策体制 | 冷戦型二極構造体制 | ネットワーク型 国際システム |
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(Feb.10,2016Rev.)
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