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参考 地域創りの意思決定
第5節 共通認識の形成 ―熟議―
第2項 公共を論じる

2.見識ある市民

 選挙における投票など民主主義の諸制度には、一人ひとりの市民が社会全体のことを知っているという前提がある。各人は、諸般のことがらについて、それぞれの専門家ほどではないが、それなりの基本的知識を持ち、また、それを知ろうとする意欲と能力をもっていることが求められている。

 しかし、現実には、各自がひたすら適応を旨としている社会では、このような前提には、大きな懸念が持たれる。
 現象学的社会学のアルフレッド・シュッツは、知識のあり方をめぐって次の3つの理念型を提示している。
@Expert(専門家)
 限定された専門領域の知識は明晰で一貫している。
AMan on the street(しろうと)
 知識は、広い範囲に渡っていても、首尾一貫してはいない。また、処方箋的な知識で満足し、実用的目的以外のものごとに対しては感情的に対処していく。
 これは、W.ミルズの「大衆」に対応する概念であろう。
BWell-informed citizen(見識ある市民)
 当人に直接的な関係がなくても、いろいろな分野について、正当な根拠をもつ意見に到達すること目指し、多くの知識(情報)を得ようとする。
 これは、W.ミルズの「公衆」に対応する概念であろう。

 現実の個人が、特定の理念型に属しているというわけではない。特に、専門家は、各人にとって特定の分野で該当することがらである。
 ただ、現下の情勢では、見識ある市民(公衆)であろうとする者は限られがちであり、しろうとが世論を形成していることは否めないであろう。

 こうした社会では、「見識ある市民」を育てる場が求められるが、それがコミュニティの役割であり、また、教育機関の役割であろう。


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(Feb.13,2016Rev./Jul.21,2004Orig.)