参考 地域創りの意思決定 第4節 社会計画 第3項 総合化 2.複合的検討計画の定義計画とは、多くの事業(行動)に、資源(資金や時間)をどう配分するかの課題への解答である。 組合せの計画 各事業の成果が一元的な尺度(利得:金銭的利益等)で計られる場合でも、多様な資源配分の組合せの中から最適な解を選択することは容易でない。 ただし、課題が明確に定義できれば数学的な解を得ることは可能。このための手法として、例えば、線形計画法などがある。 確率的計画 しかし、現実には、将来の環境が確定しているわけでなく、確率的に捉えるべき場合もある。 この場合、単に確率と利得の積和で、期待利得を最大にすること(期待収益最大化)だけが解ではない。 社会的な事業では、最低の利得の場合ができるだけ低くないものとする考え方(ミニ−マックス原理)を採用すべきとすることも多い。 逆に、個人的な行動であれば、最低の場合でも一定の保障があれば、最大の可能性に賭ける考え方(マックス−マックス原理といえよう)もあり得よう。 多分野の計画 さらに各事業が各種の分野にわたると、その成果が一元的な尺度で計られない場合も多い。消費・労働・健康・福祉・学習・遊び等々の項目が並んだとき、あらかじめ決められた相対評価方法などありえない。 生活の総合的評価を目指す、国民生活指標でも仮に8つの生活領域にまとめているが、それぞれのまとめ方に根拠があるわけでないし、さらに8つを総合することはできないとしている。ただし、この問題解決のために国民選好度調査などを試みている。 他方、ミニ=マックス原理に相当する考え方として、総合評価以前に、特定の分野に重大な欠落(ボトルネック)があると、その点で評価が決まり、資源の当該分野への重点的配分が必要という判断もある(「ボトルネック」は、もっと広義の言葉であり、例えば「ドベネックの要素樽」などの言葉が適切と考えるが、一般に使われていない)。 社会的計画 一方、社会的な事業の計画では、複数の人の考えをまとめる必要があるが、これも一定の手法があるわけではない。 次善の手法として多数決という手続きがあるが、少数の尊重の課題が残る。 一定の配分で、それ以上どのように変更しても、誰かの利得を下げざるをえない状況をバレート最適と呼ぶが、これが最善の解を保障するわけでもない。 また、意志決定に参画できる関係者の範囲にも課題がある。範囲の外に影響を及ぼす事項については、単に駆け引きを展開して略奪していく発想でいいのか、相手を思いやりさらに広範囲の善を求める発想をとるのか、これも困難な課題である。 構造の理解 以上のように複雑に絡み合った総合的な課題の解決には、構造的な理解とその共通認識の形成、さらには対応策の提唱と合意の形成に至る手続きが必要である。 この過程では、多くの関係者の議論を重ねる必要があるが、それと同時に内容を公開し、関心を持つ者の参画が常に可能とされている必要がある。 また、構造的な理解については、その課題の重なり、因果関係などをベン図、あるいはフローチャート等を用いつつ図示し、文章化を図っていくなど、理解・共通認識の形成、解決策の提唱・合意形成に至る着実な作業が求められよう。 代議制 結局は、状況を取り巻く環境を十分に熟知して、代議制の多数決などといった、一定の約束事で決めていかざるをえない。 代議制の場合は、代表者は状況の理解にできる限り努める必要があり、その上でどのような選択をするか表明し続けることが責務である。これがはたされなければ、適正な代議制が成立しない。 (Feb.12,2016Rev.) |