参考 地域創りの意思決定 第6節 分析技法 第2項 地域を捉えるいろいろな手法
(1) KJ法 地域につい考えている人は、地域を捉える枠組みをそれなりに持っているであろう。 それを具現化する一つの手法として、KJ法がある。紙片に地域の特徴を示す事項を一項目ずつ書き、床等に広げて、相互関係のある項目を一つずつ隣合わせに置き、次第に全体の構造を形成していく。ただし、この手法は、地域の枠組みを多少なりとも持っている人がやると、その先入観で整理することとなるので好ましくない。地域に新たに転入した人に、まず地域を知ってもらうことを兼ね、最初の仕事としてやってもらうとよい。この結果は既に地域のことを知っているつもりの人にも新たな見方を提供してくれるであろう。 (2) 相関分析 論理性をもう少し加えたいと考えれば、各指標の47都道府県の統計を準備して、相関係数を基礎においた分析を行えばよい。 (パス解析) 相関係数が高ければ因果関係のあることが推測され、その因果関係を順につないでいけばある程度の構造が見えてくる。この手法については、統計学の分野でいろいろと整理されている。ただし、全ての分野で適切な統計指標があるわけでなく、相当に定性的な考え方を補う必要はあろう。 (多変量分析) ここで利用できる多変量解析としては、それぞれ基礎となる考え方が異なる因子分析、主成分分析さらにはクラスター分析が思い付く。因子分析は変数の内に潜む因子を見つけ出そうとする分析であり、主成分分析は変数から内容を縮約した新しい変数を作りだそうとするする分析であり、クラスター分析は類似する標本を順次グループ化していく分析である。しかし、筆者の経験では、因子分析と主成分分析はかなり似た結果となり、さらにクラスター分析の結果のグループは、因子分析あるいは主成分分析の結果を二次元に降ろした図でグループとして捉えることができる。同じ変数を使えば当然のことであろう。 誰もが各自なりの富山を捉える枠組みを仮説として持っているだろうが、時にはこのような作業をやり直し、自らの枠組みを検証し続けなければならない。 (3) 県民性 地域社会の構造等を説明する時、例えば、富山県人は、勤勉で、教育熱心だというように、県民性が持ち出されることがよくある。これは、地域の特色を捉えて的確に表現し地域を理解する言葉としては大切である。また、地域文化の中にそのような行動規範が組み込まれ、受け継がれているという事実があるといえよう。しかし、これを原因としても何も説明したことにはならない。ちょうど生物学で本能を持ち出して動物の行動を説明しても、実際には、何も説明していないことと同様であろう。さらに、県民性の議論の多くは、各人の経験事例、巷での談義を基礎としており、47都道府県の相対比較を基礎としているものは、殆ど見かけない。 (4) 県のイメージ 全国の人が抱く県のイメージは、県の実態とは異なる面がある。特に、多くのイメージは人口当たりで描かれる訳ではないので、人口規模の小さな県は、イメージが相対的に低くなりがちと考えられる。 しかし、イメージが観光や各種イベント開催、企業進出などに影響しているとすれば、これもないがしろにできない分析視点であろう。 (May.30,2021) |