産業クラスターの形成
―繋がりあう産業―

 一定の事業分野で、個々の多様な業種の企業や大学、各種の試験研究機関等が連携し相乗効果を発揮して、秀でた産業集積を形成していく。

(1) 産業クラスター概説
 企業組織とは、元来、様々な取引コストを極小化するために、永続的取引を行うメンバーを一つの固定的集団としたものである。企業は、個々人の能力をしっかりと発揮させる組織を形成しつつ、その企業自身の得意分野(コアコンピタンス)を明確にした事業を展開していかなければならない。組織の活動の中核的な部分が明示され、さらに組織外にも情報が伝達されるようになれば、組織間の取引コストは低下し、組織の境界は融解していく。こうした経緯から、情報通信技術の深化もあり、各企業は、積極的に社外委託(アウトソーシング)を行っていくこととなる。
 これに対して、地域社会には、質の高い受託業務ができる企業の集積が必要である。社外委託する企業自身の業務も他社の事業の一部を請け負うものであり、結局は、企業相互の緊密なネットワークを形成していくこととなる。こうした産業を支える集積については、単に営利企業だけではなく、教育研究活動等を含めた幅広いものが期待される。
 地域において、個々の企業や大学、各種の試験研究機関等が連携して、相乗効果を発揮していくことを念頭に置けば、地域に一定の分野で知的集積が形成され、それを核としてさまざまな産業活動が展開されることが期待される。
 M.ポーターによれば、世界の元気な都市は、いずれも地域に有機的に繋がり合った産業群があり、それが国際的に活躍しているそうだ。この集積は産業クラスターと呼ばれ、今後の地域産業の在り方として注目されている。

(2)富山の産業クラスター
 富山でもこのような産業クラスター形成の契機となると企業群は存在しており、これを核として、地域に足腰の強い産業群が形成されていくことが期待される。
 具体的には、医薬品製造を核とした幅広い産業の集積や住宅建設・関連資材製造業の連携と積極的な事業展開などが考えられよう。
 既存の企業経営者はそれぞれその事業展開を精魂を込めて考えておられ、門外漢が産業クラスターの形成を提唱したところで事業者に示唆するところは少ないだろう。しかし、関係者(為政者、行政スタッフ、マスコミ、その他)が地域なりの産業クラスターのイメージを共有することによって、それぞれが産業群の形成を助長するよう行動していくこと、また世界に発信し地域の地位形成に資していくことには意味があろう。
 もちろん、こうした産業群から離れた事業を否定する必要は全くなく、それぞれが身近に関連事業者が集まるよう努力していけばいい。

@ 医薬品関連産業クラスター
 例えば富山県には、医薬品とそれに関連した、容器・梱包・製薬機械・印刷等々の産業が集積しており、医薬関連産業クラスターの形成がなされている。これに関連して、健康・医療分野のサービスを展開していけば、広く健康関連産業クラスター形成の可能性もあろう。

各種医薬品製造企業
  開発新薬
  ニッチ薬
  後発医薬品
  特殊製剤
  請負製薬(バルク)

原料有機化合物 立山化成
繊維・・シップ用基板 ← トリコット(高伸縮)
    エイゼット、今井機業場

容器 阪神容器、タケウチプレス、キタノ制作
アルミパッケージ ホクセイプロダクツ

製薬機械 スギノマシン、三晶MEC
洗浄機械 スギノマシン

印刷・パッケージ スガキ印刷、朝日印刷
自動包装機 岩黒製作所
梱包 ハナガタ、ジャパンパック


関連製造物
 診断材
 健康飲料
 各種家庭薬剤

薬膳

健康観光


A 住宅関連産業クラスター
 あるいは、アルミサッシメーカーやハウスビルダーを核として住宅関連産業クラスタ形成の可能性も考えられる。住宅関連産業は人口減少の中で厳しい局面にあるが、新しい住生活を積極的に提唱し事業を展開していくことができよう。
 (リフォーム、バリアフリー化、各種環境対策の提案)

ホームビルダー
  (他地域に比して数多くの地場企業が活躍している)

富山発祥の総合建設業
 清水建設、佐藤工業、松井建設

住宅素材産業
   三協立山アルミ、YKK、住生活グループ

  ガラス
  プラスチック
  木材(北洋材・国産材)
  銅器

環境機器 トヨックス

各種身障者用機器、リハビリ機器

B自然エネルギー活用産業クラスター
 富山県民の生活は、冷暖房そして自動車利用等でエネルギーの消費が多い。このため県全体として省エネルギー、自然エネルギの活用を促す議論、施策を展開していくことが求められる。この一環として、自然エネルギ活用関連事業の活性化を展開していくことはできないだろうか。
 このため、地域として温暖化ガス排出ゼロ宣言をするとともに、関連事業の展開から、産業としての集積を狙っていく。

 個々の世帯での太陽光発電を促す支援策等を独自に工夫されてもよい。
 自動車利用に関しては、利用しやすい公共交通の整備とともに、自動車の電気、水素への転換を促すことも必要であろう。太陽光発電と連携した普及策も考えられる。
 また、小水力発電に関し、県内には立地可能環境に恵まれており、この普及に多様な支援策があり得よう。
 一方で石炭火力等の縮小を促すことも必要である。

北陸電力
小水力発電機器製造
太陽光発電

国の産業クラスター計画

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(Feb.04,2020Rev./Apr.11,2014Orig.)